医療と福祉は身近になった?子供や妊婦さんの健康は保たれているの?

SDGsの目標3は「すべての人に健康と福祉を」です。「あらゆる年齢の人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」を主なテーマとして、取り組みが進んでいます。
ここでは、2016年からの取り組みと達成度、期限である2030年までにどれぐらい達成できそうなのか、など目標3について解説していきます。
目次
目標達成に必要なUHCとは?
日本では国民皆保険により自己負担をおさえて、身近な場所で治療を受けられます。しかしこのような保険制度や医療体制が整っている国ばかりではありません。世界には福祉や医療が行き届かない国もたくさんあり、救えるはずの命が毎日たくさん失われています。
医療や福祉が行き届いていない開発途上国などで、5歳未満で亡くなる子供や妊娠・出産で亡くなる女性、肺炎や下痢といった感染症で亡くなる人が後を絶たないのが現状です。その現状を改善するべく生まれたのが「すべての人に健康と福祉を」なのです。
目標3のポイントは、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の維持です。UHCとはすべての人が支払い可能な費用で、適切な健康増進、治療・予防や機能回復など、基本的な医療を受けられる状態のことを指します。各国の政治・文化や人口構造、疾病構造、公衆衛生の水準など丁寧に考慮したうえで、その国に合わせた保険制度を導入することがUHCの維持につながります。
先に挙げたように日本では国民皆保険により自己負担をおさえて治療を受けられますが、少子高齢化が課題になっている現在では、高齢者の医療費や介護費が増えつつあります。若い世代の負担も増しているため、国民皆保険制度の維持が難しくなると予測されており、日本においても「すべての人に健康と福祉を」というテーマは他人ごとではなく、国民全員が意識して取り組むべき問題です。
2020年の達成状況
国連の報告書によると5歳未満の死者減少やはしかによる死者減少など、前進は見られましたが、2030年の目標達成には更なる対策が必要とされています。さらに、新型コロナウイルスの流行が健康と福祉分野に広く影響しており、目標達成への速度を低下させています。
しかし、一定の進歩があったことは確かであり、改善されたところもあります。目標3の中でも特に重要な項目の2020年の達成度を確認してみましょう。
乳幼児および妊産婦死亡率の減少
WHOが公開しているファクトシートなどを見ると近年は、妊産婦死亡率が低下し改善傾向に見られますが、それでも毎日810人※2ほどの妊婦や産婦が十分なケアを受けることができなかったためにお亡くなりになっています。
妊産婦死亡の94%は開発途上国をはじめとした中、低所得国とされており、原因としては、妊婦や産婦への十分なケアが不足していることや思春期出産などがあげれます。
思春期出産は、成人女性よりも合併症や死亡のリスクが高く、児童婚が問題となっているアフリカでは、思春期出産率が高くなる傾向があり以前より人権問題などとあわせて取り上げられてきました。
しかし、2000年~2018年の間に徐々にですが、思春期出産率は低下しており今後の更なる取り組みが求められています。
同様に乳幼児死亡率も改善傾向にあり、新生児死亡率は2000年時点で1,000中30人、5歳以未満児死亡率は1,000人中76人でしたが、2019年時点で新生児死亡率は17人、5歳未満児死亡率は38人と大幅に改善しています。
ですが、死亡率ではなく実数は深刻なままで、5歳未満で亡くなる子供の数は540万人(2017年時点)と少なくありません。また、5歳児未満の死亡率改善が遅れているのは主にサハラ・アフリカ諸国ですので、地域的な対策強化も必要となります。
日本の国民皆保険を世界に

日本の国民皆保険制度を開発途上国へ広めUHCの普及を主導する取り組みが進められています。しかし、UHCにおいては日本のような社会保険方式以外にも税方式があります。政治・経済・文化など国々によって状況が異なるのでその国にあった制度が必要になるため、それを踏まえた日本の国際協力が必要となります。
国民皆保険ではありませんが、中には成果を上げている取り組みもあります。それが母子手帳の配布です。紛争により難民になってしまうとこれまで通っていた保健所や病院に通えなくなりますが、母子手帳があれば別の保健所で継続して予防接種や乳児検診が受けられます。
日本で生まれた母子手帳は途上国を中心に広がり、子供とお母さんの健康維持に役立つようになりました。命を守る取り組みは確実に広がっています。
私たちにできること
日本に住む私たちは、SDGsの目標に対し何をすればよいのでしょうか。国民皆保険があり、乳幼児死亡率も低い日本において、目標3「すべての人に健康と福祉を」についてはやるべきことが浮かびづらいかもしれません。
しかし、現状をよく見るとやるべきことはたくさんあります。ここでは特に課題となる部分をご紹介します。
高齢者の孤独や孤立をふせぐ

少子高齢化が進んだ日本では、一人暮らしの高齢者が増えています。それに伴い社会から孤立した高齢者も増えていると考えてよいでしょう。高齢者は毎日の暮らしに負担を抱える人も少なくなく、公的支援や近くの人の助けを待っている人もいます。
家族が助ければよい、と見過ごすのではなく、細やかなコミュニケーションで孤立や孤独をふせぐことが地域のセーフティネット作りに役立ちます。
いきなりサポートを申し出るのはハードルが高いと感じるなら、毎日のあいさつや声がけだけから始めるとよいでしょう。高齢者の問題を地域全体で考えること、それがSDGsの目標達成につながります。
感染症や性病についての知識をつける
日本は清潔なイメージがあり、衛生面が問題になりがちな感染症とは無縁と思われるかもしれません。しかし、2018年の結核罹患率の統計を見ると日本はG7の中で最も高く人口10万人あたり12.3と「中まん延国」です。結核は昔の病気ではなく、今なお日本において課題が多い感染症の一つです※1。
また、日本でのHIV感染者・エイズ患者は増えており、2018年には累計3万人を超え先進国で日本だけが、増えている結果となっています。
感染症の問題一つでもこれだけの課題がありますが、把握している人は少ないのではないでしょうか。私たちにできることは、まず課題に興味を持ち、正しい知識を身に着けるため情報を探すことです。それが大切な人を守る行動の第一歩につながります。
※1:厚生労働省「平成30年 結核登録者情報調査年報集計結果について」参考
未来の健康と福祉をまもるために
この記事で紹介したSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の内容や成果・課題はごく一部です。まだまだ課題が多いこの目標に対し、私たちができることは「現状把握と行動変化」と言えるでしょう。
先に挙げたような高齢者への声がけや感染症に関する知識と防ぐための予防などがSDGsの目標達成につながります。今この課題を知った時から行動を起こし、小さな一歩から始めていきましょう。

