水の飲み過ぎで水中毒に?熱中症は正しい水の飲み方で対策を

水中毒という言葉をご存知ですか?名前の通り、水の中毒になってしまうことをいいます。水ならいくら飲んでも大丈夫なように思えますが、多量に摂取してしまうと身体の不調に繋がることも。特に熱中症対策として水を沢山飲む今の時期は必要です。今回はそんな水中毒の症状や原因、正しい水の飲み方について解説いたします。
目次
水中毒とは
水中毒とは、水を大量に飲むことが習慣となり中毒になってしまっていることをいいます。
水を多飲することで尿を排泄する能力が低下してしまい、血液中のナトリウム濃度が減少する希釈性低ナトリウム血症に陥ってしまう状態です。すると身体に、不調が現れるようになってしまうのです。
精神疾患を患っている人によく見られる症状ですが、そうでない場合にも水中毒に陥ることがあります。
今年の夏も猛暑が続き、気象庁や厚生労働省は熱中症対策として水をこまめに飲むことを呼びかけていました。そんななか警視庁警備部災害対策課の公式ツイッターが、水中毒に対する危険性を発信したことをご存知でしょうか。
熱中症対策として水を過剰に飲むことで、水中毒になる危険性があると注意を促す内容です。
熱中症対策として水をたくさん飲んでいたのに、逆に血液中のナトリウム濃度を減少させてしまうことに。身体を守るための行為が、逆効果となってしまうこともあるのです。
また夏だけでなく、乾燥によってのどがかわきやすくなる冬も特に注意が必要です。
水中毒で見られる症状
水中毒になると見られる症状について、見ていきましょう。
- 頭痛
- めまい
- 頻尿
- 下痢
- むくみ など
軽度な水中毒の場合、倦怠感に加えて上記のような症状が起こり得ます。
熱中症の症状とよく似ているため、より水を多く飲んでしまう方もいるかもしれません。充分な水分が摂取できている場合には、横になった状態でしばらく安静にして様子を見るのが良いでしょう。
下記症状に当てはまる場合は、水中毒が重症であることが考えられます。
- 嘔吐
- 呼吸困難
- 意識障害
- 錯乱
- うっ血性心不全
- 肺水腫 など
これらの症状が現れると、命に危険を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。
水中毒を引き起こす原因
命の危険に晒されることもある水中毒。ではなぜ水を多量に飲んでしまい、中毒となってしまうのでしょうか。ここからは考えられる原因を説明いたします。
ダイエットやストレスによる過剰摂取
水中毒を引き起こす原因としてまず考えられるのは、ダイエットやストレスによる水の過剰摂取です。
ダイエット中は意識的に水を多く飲む人も多いですよね。食事制限による水分不足、むくみや便秘の予防として、適量の水を飲むことはダイエット効果も期待できます。
しかしながら空腹をまぎらわすために水を飲んだり、あびるように多量の水を飲んでしまったりしている場合は注意が必要です。1日に飲む水の量の目安は1.5~2リットル程度。過度な水分補給は水中毒へのリスクが高まります。
またストレスによって、水を過剰に飲んでしまう人も。アルコールや糖質の多いジュースを飲むより身体に負担が少ないのは明らかですが、それはあくまでも適量を守った場合。
先述した精神疾患を患っていない場合にも水中毒になるというのは、こうしたダイエットやストレスによる水の多飲が引き金となっているケースが多いです。
精神疾患の症状による多飲傾向
精神疾患の症状として現れる幻覚や妄想、不安などからも水を多飲してしまう傾向があるといわれています。
全ての人に見られるわけではなく、その原因も様々です。また精神疾患の治療として入院している患者さんが、ストレスから水を多く飲んでしまい、水中毒に陥ってしまうこともあります。
服薬の副作用による口の渇き
定型抗精神病薬など、向精神薬を飲むことで起きる副作用の口の渇きから、水を飲み過ぎてしまうケースもあります。
薬によっては強い口の渇きを感じるものも。すると水を必要以上に飲むことが習慣化されてしまい、結果水中毒の状態となる場合も多く見られます。
【熱中症対策に】正しい水の飲み方
熱中症予防として水分をとることは重要ですが、過剰摂取は水中毒の引き金になることも。水中毒にならないためには、正しく水を飲むことが大切です。
一度に飲む水の量はコップ一杯(200ml程度)に
正しい水の飲み方は、一度にコップ一杯(200ml程度)の水を、1~2時間に1回のペースで飲むこと。
夏は熱中症予防として、こまめな水分補給をしますよね。そもそも熱中症の症状は、体内の水分や塩分のバランスが崩れることで起きるものです。そのため予防として水を飲むのは正しい行為といえます。
しかし、一度に大量の水を飲めばいいというわけではありません。一度に多飲してしまうと水中毒のリスクが高まるだけでなく、身体にも負担がかかってしまいます。
ではなぜコップ一杯程度がいいのか、それは人間の身体が一度に摂取できる水の量が200ml程度であるからです。例えば500mlの水を一度に飲んだとしても全てが吸収されるわけでなく、体内に吸収されなかった水は汗や尿として排出されてしまいます。
そのためコップ一杯の水をこまめに飲んで、身体から水分が失われる状態を避けることが大切というわけです。
その他にもダイエット中やスポーツ時の水の飲み方について知りたい方は、下記の記事を参考にしてみて下さい。
水中毒・熱中症対策にはナトリウムが含んだ飲み物も◎
水中毒と熱中症の対策には、スポーツドリンクや経口補水液などを水代わりに飲むのも良いでしょう。
水を大量に飲むと血液中のナトリウム濃度が低下してしまう、という話をしましたね。スポーツドリンクや経口補水液にはナトリウムが多く含まれているため、水中毒の症状を抑えるのに効果的。また塩分が失われてしまう熱中症の対策にも最適です。
しかしナトリウムを多く含んだドリンクは、飲み過ぎると逆にのどが渇いてしまうという弊害もあります。するとまた水を欲してしまう悪循環に陥るため、水と同じように一度に飲む量はコップ一杯程度にしておきましょう。
また梅干しや塩あめもナトリウムを多く含みますから、水中毒・熱中症対策におすすめです。
水中毒の治療方法
水中毒の治療方法の基本は、飲む水の量を制限することです。腎臓機能に問題がなければ、それだけで血液中のナトリウム濃度は改善するといわれています。
それに加えて塩分を摂取することも効果的です。先ほどいったスポーツドリンクや経口補水液を水の代わりに飲んだり、梅干しや塩あめを食べたり。体内にナトリウムを補給してあげることが大切です。
しかし気を付けたいのは、塩化ナトリウム(塩分)も一度に多く摂取してはいけないということ。というのもナトリウムを急速に体内に入れてしまうと、脳が損傷してしまう危険性があるためです。ゆっくり時間をかけて、摂取するのが良いでしょう。
水中毒が軽症な場合、これらの飲む水の量の制限とナトリウムの補給を行い、安静にし様子を見ます。
しかしながら重症となってしまっている場合、ナトリウムは輸液によって補給しなくてはなりません。自身で急速にナトリウム摂取をしてしまうと、脳が損傷するだけでなく呼吸困難に陥ってしまう危険性もあるからです。
もし重度な症状が見られた場合無理をせず、救急車を呼び医師の診察を受けるようにしてください。
健康な身体作りには正しく水を飲むことが大切!
水を過剰に飲むことで起きてしまう水中毒。もちろん水自体は危険なものではありません。適量を正しく飲めば、健康な体作りのサポートをしてくれる存在です。もし水を多飲することが習慣となってしまっている場合、今回解説した原因や症状と照らし合わせて必要な対策や治療をしてくださいね。

